Group Representative

代表挨拶

ごあいさつ

大切な人が、
どこで最期を迎えても。

高齢の男性が家族と食卓を囲んで食事を楽しむイラスト

そのときまで「食べる」を支えられる社会を、私たちはつくりたいと考えています。

人は、最期の日まで食べます。けれど、噛めない、飲み込めない、痛くて口を開けられない——そうした状態で過ごす方が、いまも数多くいます。訪問歯科は、その人の「食べる」と、その先の「生きる」に直接手を伸ばせる仕事です。

この仕事は、医療の真ん中にあります。義歯、嚥下、口腔外科、全身疾患、そして多職種と連携する力。どれが欠けても、人の「食べる」は支えられません。難しい。だからこそ、やりがいがあります。そして高齢者が増え続けるこれからの日本で、この力を持つ歯科は、地域に必要とされ続けます。医療としてのやりがいと、医院としての安定は、この分野では同じ方向を向いています。

私は、歯科医師の役割が変わる時期に来ていると思っています。歯科の中で完結し、自分たちで自分たちを評価する時代から、医師や看護師、介護の専門職とともに働き、医療と社会の中で評価される時代へ。しっかり学んだ人が、正当に認められ、報われる。その転換を、訪問歯科から始めたいのです。

食べるを支える歯科を、全国のインフラに。

いま現場に立つ歯科医師・衛生士の力を引き上げること。志ある若い世代がこの分野を選ぶ流れをつくること。その二つを、医療人が医療に集中できる仕組みと、続けられる経営で支えていきます。

ともに歩んでくださる方を、お待ちしています。

2026年8月

Ihana訪問歯科グループ 代表

三輪 俊太

株式会社Foodie COO/医療法人社団恵眞会 理事長/歯科医師/博士(歯学)

日本補綴歯科学会 専門医/日本老年歯科医学会 認定医/日本在宅医療連合学会 所属

大阪大学歯学部卒業、同大学院にて博士号取得。大学病院勤務を経て、長野県の歯科診療所で訪問歯科医長として施設・病院・在宅の現場を経験。2020年、Ihana歯科岐阜を継承。義歯治療と訪問歯科を軸に、認知症歯科や高齢者の食支援に取り組んでいる。日本老年歯科医学会、日本補綴歯科学会、日本在宅ケア学会などで登壇経験あり。

Episode

エピソード — 訪問歯科の現場から

消えた不明熱

田中さんは、80歳を超えても食べることが大好きな男性でした。特に、孫たちと囲む食卓が田中さんにとって何よりの楽しみでした。しかし、数年前に患った脳梗塞の後遺症により、医師からはミキサー食しか食べてはいけないという指示を受けていました。

あるとき、田中さんは38度を超える高熱を繰り返すようになり、その度にミキサー食すら危うくなっていました。在宅医が田中さんの治療を担当していましたが、原因が特定できずに悩んでいました。田中さんは繰り返される発熱に苦しみ、在宅医もまたその解決策が見つからずに苦悶していたのです。

「誤嚥性肺炎の可能性が高いと思いますが、こんなに頻繁に高熱が出る理由がはっきりしないんです」と在宅医は田中さんの娘に説明しました。「薬の効果は一時的で、ミキサー食すら食べられなくなってきています。このままだと胃ろうを検討せざるを得ないかもしれません」と続けました。

田中さんの家族が途方に暮れていたとき、訪問歯科医師の佐藤さんが田中さんの家を訪れることになりました。在宅医は半信半疑ながら、藁にもすがる思いで訪問歯科医師の佐藤先生に診察を依頼しました。

わずか1ヶ月半後、在宅医は驚くべき知らせを受け取りました。田中さんが高熱を克服し、再び食事を楽しんでいるというのです。その理由が分からなかった在宅医は、佐藤先生に詳しく話を聞きました。

佐藤先生は、田中さんの治療について語りました。

「ご推察通り、誤嚥性肺炎が発熱の原因だったと思います。しかしその背景には、二つの原因がありました。一つは舌の機能低下による口腔内の残留物の誤嚥、もう一つはその誤嚥物に細菌が多量に含まれていたことです」

「すぐに対応できる方法として、歯科衛生士による口腔ケアを行いました。たとえ誤嚥をしたとしても、細菌が少なければ体への侵襲は軽くて済むからです。実際、田中さんの熱はこれだけで37度台に下がりました」

「しかし、純粋に誤嚥すること自体は残っていたので、熱は継続していました。そこで、もう一つの原因である舌の機能の低下へアプローチを行いました。脳梗塞発症後から期間が経過しているので、舌の機能を戻すよりは、今の舌の機能でも飲み込みやすい義歯を制作しました。これにより純粋に誤嚥の量が減少し、誤嚥の侵襲よりも田中さんの体力や免疫力が上回るようになったことで、発熱は治ったというわけです」

さらに佐藤先生は管理栄養士とも連携し、田中さんの食形態について相談しました。適切な栄養を摂取できるよう食事内容を見直し、体重増加と低栄養の改善を目指したのです。

在宅医は驚きと感動で佐藤先生に感謝の言葉を伝えました。「田中さんが再び元気になり、食事を楽しめるようになったのは本当に素晴らしいことです。歯科医師としてのアプローチがこれほど効果的だとは思いませんでした」彼は訪問歯科診療の重要性を改めて認識したそうです。

高齢患者の自宅で診療する歯科医師と、見守るご家族のイラスト

補足

01

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎には、細菌性肺炎、化学性肺臓炎、びまん性嚥下性細気管支炎(DAB)がある。田中さんの場合、口腔ケアによって細菌性肺炎が軽症化し、発熱が低下した。また、義歯の製作により口腔咽頭残留が減少し、嚥下後の誤嚥が減少したことで、患者の体力が誤嚥の侵襲に耐えられるようになり、発熱が低下した。

02

舌接触補助床(PAP)

田中さんはすでに義歯を使用していたが、舌の機能と調和していなかった。舌の機能を診断した上で、その機能と調和する義歯(舌接触補助床:PAP)を製作することで、誤嚥の量を減少させることができた。

03

胃ろうの回避と食事の楽しみ

発熱を繰り返すことは、体に慢性炎症があることを示し、避けたい状態である。この症例では、歯科の介入により、食べる喜びを回復させただけでなく、胃ろうを回避することができた。発熱が収まり、田中さんは再び好きな食事を楽しめるようになり、生活の質が大きく向上した。

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