同一建物居住者と単一建物診療患者の例外規定【歯科】
三輪 俊太歯科医師公開 2026.10.06更新 2026.10.08
目次 8
この記事で分かること
訪問歯科の算定には、人数の数え方が2つあります。歯科訪問診療料は「同一建物居住者」を1日で数え、訪問歯科衛生指導料は「単一建物診療患者」を1か月で数えます。どちらにも例外があり、取り違えると区分を誤ります。
| 同一建物居住者 | 単一建物診療患者 | |
|---|---|---|
| 使う点数 | 歯科訪問診療料 | 訪問歯科衛生指導料 |
| 数える期間 | 1日 | 1か月 |
| 例外 | 同一の患家・急な求め | ユニット・病棟・世帯・戸数 |
この記事では、令和8年6月からの通知を元に、2つの数え方と例外、現場で起きやすい数え間違いをまとめていきます。
同一建物とは建築基準法の「一の建物」
同一建物居住者とは、基本的には建築基準法第2条第1号の建築物に居住する複数の者をいいます(通知C000(6))。例として、特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・マンションなどの集合住宅に入居している複数の患者さんと、短期入所生活介護・認知症対応型共同生活介護・小規模多機能型居宅介護(宿泊サービスに限る)などを利用している複数の患者さんが挙げられています。
建物の単位は、屋根と、柱または壁を共有しているかで決まります。2つの棟が渡り廊下でつながっているだけなら、「一の建物」にはなりません。
たとえば2棟で合わせて10人を診た日、棟が渡り廊下でつながっているだけで8人と2人に分かれていれば、8人の棟は歯科訪問診療3、2人の棟は歯科訪問診療2です。屋根を共有していれば10人と数え、歯科訪問診療4になります。訪問先の建物がどちらに当たるかは、最初の訪問の前に確かめておきましょう。
歯科訪問診療料は1日の人数で5段階
同じ建物で同じ日に診療した人数で、区分が決まります(通知C000(5)〜(7)(11)(12))。
| 同じ建物で同じ日に診た人数 | 区分 |
|---|---|
| 1人のみ | 歯科訪問診療1 |
| 2人以上3人以下 | 歯科訪問診療2 |
| 4人以上9人以下 | 歯科訪問診療3 |
| 10人以上19人以下 | 歯科訪問診療4 |
| 20人以上 | 歯科訪問診療5 |
例外1 同一の患家(夫婦・親子)
同居する同一世帯の複数の患者さんを診療した場合など、同一の患家で2人以上3人以下を診療したときは、1人は歯科訪問診療1、それ以外の患者さんは歯科訪問診療2を算定します(通知C000(8))。
歯科訪問診療補助加算も分かれます。歯科訪問診療1を算定した患者さんは「同一建物居住者以外の場合」、歯科訪問診療2を算定した患者さんは「同一建物居住者の場合」で算定します。
気をつけたいのは、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に夫婦で入居している場合です。同じ日に、夫婦のほかにもその建物で診療した患者さんがいれば、同一の患家の例外にはなりません。建物全体の人数で区分を決めます。
例外2 同じ建物の別の患者さんを急に診たとき
令和8年度の改定で明確になった取り扱いです。同一建物居住者の患者さん1人を診療した際に、同じ建物に住む別の患者さんを、患者さんなどの求めに応じて緊急に診療する必要があると認め、結果として2人になった場合は、2人とも歯科訪問診療1を算定して差し支えありません(通知C000(9))。
条件は、緊急に診療する必要があった理由を診療録に記載することです。起きた日には、次の3つを診療録に残しておきましょう。
| 記載すること | 内容 |
|---|---|
| いつ | 内容求められた当日の日付 |
| 誰から | 内容求めた人(患者さん・ご家族・施設の職員など) |
| 理由 | 内容緊急に診療してほしいと言われた理由 |
訪問歯科衛生指導料は1か月で数える
単一建物診療患者とは、その建物に居住する人のうち、自院の訪問診療の計画に基づいて訪問歯科衛生指導を行い、同じ月に訪問歯科衛生指導料を算定する人をいいます(通知C001(3))。特別の関係にある医療機関等の患者さんとして注4で算定する人は、この数から除きます。
次の場合は、数え方が変わります(同(3))。
| 場合 | 数え方 |
|---|---|
| ユニットが3以下の認知症対応型共同生活介護事業所 | 数え方ユニットごとの人数 |
| 病院 | 数え方病棟ごとの人数 |
| 1つの患家に、同居する同一世帯の対象の患者さんが2人以上 | 数え方患者さんごとに「1人の場合」 |
| 指導を行う患者数が建物の戸数の10%以下 | 数え方それぞれ「1人の場合」 |
| 戸数が20戸未満で、指導を行う患者さんが2人以下 | 数え方それぞれ「1人の場合」 |
病棟ごとに数えるのは、訪問歯科衛生指導料の単一建物診療患者の決まりです。歯科訪問診療料の同一建物居住者を病棟で分ける規定は、通知C000にはありません。
よくある数え間違い
| 場面 | 誤り | 正しい数え方 |
|---|---|---|
| 居宅で、同じ世帯の夫婦2人を診療した日 | 誤り2人とも歯科訪問診療2 | 正しい数え方1人目は歯科訪問診療1、2人目は歯科訪問診療2。訪問歯科衛生指導料は2人とも「1人の場合」 |
| 棟が分かれた施設を訪問した日 | 誤り屋根を共有する棟を別の建物として数える/渡り廊下でつながるだけの棟を1つとして数える | 正しい数え方屋根と、柱または壁を共有していれば一の建物。渡り廊下でつながるだけなら別の建物 |
| 病院で、一般病棟1人と回復期病棟9人に訪問歯科衛生指導をした月 | 誤り10人として数える | 正しい数え方病棟ごとに数える。一般病棟は「1人の場合」、回復期病棟は9人 |
Ihana訪問歯科グループでは、どの区分で算定するかは、その日に訪問した歯科医師が判断しています。判断に迷う建物は挙げてもらい、相談して決めています。
まとめ 数える手順
- 訪問先が「一の建物」かを確かめる(屋根と、柱または壁の共有)
- 歯科訪問診療料は、その日にその建物で診療した人数で区分を決める
- 同一の患家か、求めに応じた緊急の診療に当たるかを確かめる。緊急なら理由を診療録に書く
- 訪問歯科衛生指導料は、その月の人数で数え、ユニット・病棟・同一世帯・戸数の例外に当たるかを確かめる
出典
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保医発0305第6号)別添2 歯科診療報酬点数表に関する事項 C000(5)〜(9)(11)(12)・C001(3)
- 令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】(厚生労働省保険局医療課)p.29
- 疑義解釈資料 その1〜その13(令和8年9月25日まで)
この記事を書いた人
三輪 俊太
Ihana訪問歯科グループ 代表
- 歯科医師
- 日本補綴歯科学会専門医
- 日本老年歯科医学会認定医
- 日本在宅医療連合学会会員
大阪大学歯学部卒業、同大学院博士課程修了。義歯・栄養・多職種連携を専門に、Ihana訪問歯科グループで訪問診療にあたっています。歯科医療者向けの教育事業(IhanaAcademy)を主宰し、学会・研修会での講演も行っています。